住民投票の10年>
住民投票に関する特別措置法(試案)
>>ホームへ
   更新:2006/12/15
 住民投票に関する特別措置法(試案)
 〈住民投票立法フォーラム〉「住民投票に関する特別措置法」(住民投票法)の試案について
 住民投票に関する特別措置法(試案)
〈住民投票立法フォーラム〉
「住民投票に関する特別措置法」(住民投票法)の試案について

 このままでは、住民投票は広がりを見せるどころか、しだいに廃れていくだろう。  なぜなら、各地の主権者が立ち上がって住民投票の実施を求める運動を展開しても、「議会否決」が続くのはまちがいなく、その時点で、政治に参加し市民自治を実現しようとする住民の情熱が失せていくからだ。  また、たとえ住民投票を実現させても、法的拘束力がないことから、名護市のように投票結果を住民投票の執行者である市長が反故にしたり、徳島市のように市長は結果を尊重しても国(国土交通省)が引かないという状況を生み出している。
 名護市や徳島市に限らず、どの地域においても、直接請求によって住民投票を実現させる運動を担ってきた人々や、賛否のキャンペーン合戦に関わった人々は、途方もない時間、労力、金銭を費やしている。にもかかわらず、投票結果が実現されないのでは、いったい何のために苦労して住民投票をやったのかということになる。
 99年5月29日、各地の住民投票グループが集う「住民投票全国ネットワーク」(加盟22団体)の設立総会が、住民投票条例の制定を控えていた徳島市で開催された。会合では、参加者から「議会否決」と「法的拘束力」という二つの壁に関する発言が相次ぎ、この際、新たな制度を考える専門家グループを設けるなどして、状況を是正していこうということになった。
 この総会の翌月、そういった声に応え、住民投票の法制化をめざす「住民投票立法フォーラム」(新藤宗幸、折田泰宏共同代表)が誕生した。このフォーラムは、政府や官僚任せではなく、主権者がイニシアティブをとって住民投票制度を確立しようというもので、学者、政治家、ジャーナリストや各地の住民投票グループのメンバーらで構成されている。
 立法化の主たるねらいは、住民投票の実施を求める署名が有権者の一定数を超えたら、議会はこれを拒めないようにし、議会の多数派によってつぶされ続けている住民発案(直接請求)による実施のハードルを低くすることだ。
 この点に関しては、フォーラムの中でも意見の相違はないのだが、投票結果に法的拘束力を持たせるか否か、対象テーマを制限するか否か、永住外国人の投票権を認めるか否かなど、さまざまな論点がある。
 では、どのような制度を設けるべきなのか。住民投票立法フォーラムが、議論の末に作成した「住民投票に関する特別措置法」(住民投票法)の試案を基に話を進めた
い。法制化のポイントは次の4点にある。

(1) 住民投票を請求する形式と実施の要件

図1 間接イニシアティブ(発案の投票)の例
(クリックすると大きくなります)
 
図2 レファンダム(表決の投票)の例
(クリックすると大きくなります)
 

 現行制度では、住民側が住民投票条例の制定に賛同する有権者の2%以上の署名を収集し、この制定を首長に対して請求するという形式になっており、他の条例同様、議会が可決しなければ条例は制定されない。
 一方、フォーラム案では、欧米において多く採用されている「イニシアティブ」(発案の投票)と「レファレンダム」(表決の投票)の2本立てになっている。
 「イニシアティブ」というのは、住民の側が条例案や条例の改正案を起草して首長にこの制定を請求する制度で、請求したものが議会の審議を経ずそのまま住民投票にかけられるのを「直接イニシアティブ」、請求されたものが議会で審議され、議会がそれを否決したり修正可決すると住民投票が実施されるものを「間接イニシアティブ」という。フォーラム案では「間接」の方を採用している(具体的にどのように住民投票を実施するかについては、図7を参照のこと)。
 「レファレンダム」とは、首長や議会が決定した事項について有権者の投票によって可否を決める制度のことで、住民の承認を得ることが義務づけられている義務的なレファレンダム、住民投票にかけるかどうかを首長や議会が決めて行なう諮問的なレファレンダムなど、いくつかの種類がある。
 フォーラム案に採用されたのは、主権者である市民の権利の行使としてのレファレンダムだ。これは、議会が可決した条例や決議の発効を阻むために、住民が規定の署名を集めて首長に請求しさえすれば、その条例や決議などを必ず住民投票にかけるという制度。このフォーラム案に従えば、首長や議員の発案でレファレンダム(表決の投票)を実施することはできない(これについては、図8を参照)。

 イニシアティブにせよレファレンダムにせよ、住民はいったいどれだけの署名を集めれば請求することができるのか。フォーラム案では、その自治体が抱える有権者の数によって必要とする署名数に差をつけ、最少で5%(有権者数が100万人以上のところ)、最多で10%(同じく50万人以下)としている。
 海外ではどうか。アメリカの場合、州法に関するイニシアティブあるいはレファレンダムについては、カリフォルニア州は前回知事選投票者の5%(イニシアティブ、レファレンダムとも)。オハイオ州ではイニシアティブは有権者の3%で、レファレンダムは郡の半数から各3%を収集するという条件での有権者の6%となっている。 ドイツの場合は、法律に関するイニシアティブ(州民発案)はブレーメン州が有権者の20%、バイエルン州が有権者の10%、バーデン=ヴュルテンペルク州では有権者の6分の1となっている。
 また、バーデン=ヴュルテンベルク州における市町村法では、イニシアティブ(住民発案)について、有権者の15%の署名が必要であるが、市町村人口に応じて、5万人以下=3千人、5万人〜10万人=6千人、10万人〜20万人=1万2千人、20万人以上=2万4千人の署名数があれば可能だとしている。そして、イニシアティブによって請求された措置について議会がこれを議決したときは、住民投票は行なわれない。
 住民投票を発案する権利の所在と議会の拒否権について紹介するなら、各国の中には発案権を持つのは議会や自治体当局だけで住民にはその権利がないという国もある。アイルランド、ノルウェー、ベルギー、ポルトガルなどがそうだ。
 また、日本のように、いくら請求署名を集めても実施の決定は議会が行なうというのは、スペインやフィンランドなど。その逆に、チェコ、オーストリア、ルクセンブルクなどでは一定数の請求署名が集まれば必ず住民投票を実施する。

(2) 住民投票の対象事項

★日本の制度
 


 

 住民投票のテーマを限定すべきかどうか。フォーラム案では除外事項(ネガティブリスト)を一切設けていない。地域社会における争点となるものであれば、それに関係する当事者、事業者が国や都道府県であれ民間企業であれ、あらゆるテーマで住民投票を請求できるとした。
 除外事項を設けなかった理由は主に2つある。政府は、例えば徳島市の可動堰建設問題など当該自治体に許認可権限のない事項や「原発」「基地」といったいわゆる国策に関する事項は「住民投票になじまない」としており、これらの事項を適用除外とする住民投票の法制化を図ろうとする動きが見られる。こういった目論みに対抗する意味もあって除外事項を一切設けないことにした。
 もう1つの理由は、地方分権、市民自治の精神に則り、主権者である住民側の自覚と責任にかけようという考えだ。
 住民投票が衆愚政治になるかどうか、住民投票を少数者抑圧の手段に利用するかどうかは有権者次第である。例えば、「要介護者を含む老人施設」や「知的障害者の施設」が近所に建設されることを阻むために住民投票を使うとか、永住外国人の人権や生活権を損なうような事項を住民投票によって決めるとかいったことについては、そういった類いのテーマをあらかじめ除外事項に盛りこむのではなく、主権者の知恵や良心に判断を委ねるべきだと考えた。
 なお、欧米では「予算」や「税金」に関する事項、市町村長の選任、罷免に関する事項などを除外事項としている国がいくつかある。
 ところで、海外の自治体ではどんなテーマの住民投票を行なっているのか。その一部を紹介しておく。スウェーデンでは、「難民の受け入れ」「道路の拡張」「市の名称」「国営酒店の設置」「原発の廃棄物処理地」「地方税率」など。
 スイスでは「ホテルとそのレストランに関する国際サッカー連盟との建築権契約」「ごみ処理有料化」など。
 フランスでは「路面電卓の導入」「原発の設置」「歩行者及びバス専用ゾーンの設置」「市町村の予算」「老人ホームの改築」「オートレースのサーキットコースの創設」など。
 アメリカでは「公選者の任期制限」「不法移民の締め出し」「タバコ税の増税」「犯罪者の矯正施設の建設」「マリファナの医療目的の使用」「空き瓶のデポジット(預かり金)制」「犯罪被害者の権利擁護」「原子力発電所の建設」「公債発行」など。
 このように、実にさまざまな案件が住民投票にかけられているのだ。

(3) 投票権者の範囲

ドイツ・ブランデンブルク州の市町村における市民発議制度
(クリックすると大きくなります)

 住民投票の投票権者をどのように定めたらよいのだろうか。フォーラム案では、公職選挙法の定める有権者は「発案権」と「投票権」の両方を持つことができると定めた。加えて、自治体ごとの条例で、永住外国人や未成年者などその範囲を拡大できるとしている。
 政府は永住外国人に地方参政権を与える方針を固めつつある。在日コリアンをはじめとする永住外国人は日本国民と同じ納税者であり、地方議員の選挙や住民投票について同じ権利を持つのは当然のことだと考える人は多いが、参政権を得たいのなら日本国籍を取得すべきだという意見もある。フォーラム案は、他の項目については住民投票法をもって一律に規定しているが、この項目に限り自治体において「拡大するか否か」「どんなふうに拡大するか」を決めるべきだとしている。
 なお、海外で永住外国人に住民投票への参加を認めている国には、オランダやスウェーデンなどがある。

(4) 成立要件と法的拘束力

 どれくらいの票が集まれば、それを自治体の意思として認めるのか、どのようにして、その結果に法的拘束力を持たせるべきなのか。
 フォーラム案では「イニシアティブ(発案の投票)」「レファレンダム(表決の投票)」ともに、有効投票の過半数の票が、投票資格者総数の3分の1に達すれば、その票の示す意思が自治体の意思として確定するとした。
 これに伴い、自治体の長、その他の執行機関、および議会はこの意思に拘束されることになり、長と議会は決議や予算の執行ができなくなる。また、投票結果に反することになる許認可処分の申請が国や県や企業などの事業者からあるときは、他の法令の規定にかかわらず不許可としなければならない。つまり、フォーラム案では、投票結果に法的拘束力を持たせている。
 投票の拘束力の発生要件を絶対得票率(有権者総数に占める得票数の割合)に拠ることとしたのは、相対得票率(有効投票総数に占める得票数の割合)よりも、投票棄権者を含めた住民全体の意思の反映をより明確に示すものであると考えたからだ。
 具体的に数字を示して考えて見てみよう。
 間接イニシアティブの例としてあげた「歩行者及びバス専用ゾーンの設置に関する」条例案について、議会がこの制定を拒否し、住民投票が実施されたとする。
・Aパターン/投票率が60%で、投票者の中で賛成票が60%、反対票が40%の場合。
 60%×60%で、賛成票は有権者総数の36%を得たことになり、条例は制定される。
・Bパターン/投票率が50%で、投票者の中で賛成票が65%、反対票が35%の場合。
 Aパターンより賛成票の相対得票率は5%高いものの、50%×65%=32.5%で、有 権者総数の3分の1という規定に達せず、条例は制定されない。
 では、これまで住民投票が実施されたいくつかの地域にこの規定をあてはめたらどうなるか。
・新潟県巻町  投票率88.29%、投票者の中で賛成票38.55%、反対票60.85%
     反対票が有権者総数の53.72%に達しており成立。
・沖縄県名護市 投票率82.45%、投票者の中で賛成票45.34%、反対票52.87%
     反対票が有権者総数の43.59%に達しており成立。
・徳島県徳島市 投票率55%、投票者の中で賛成票8.22%、反対票90.14%
     反対票が有権者総数の49.58%に達しており成立。
いずれも、反対票が有権者総数の3分の1を超えており、フォーラム案のような制度が日本にあれば、名護のように議会が住民投票後に「ヘリ基地建設推進決議」をしたり、市長が「基地受け入れを容認」したりすることはできなくなる。
 ちなみに、海外においては、住民投票の結果に法的拘束力を持たせているのは、オーストリア、ハンガリー、スロヴァキア、チェコ、ドイツ、アメリカなどで、拘束力を持たせていない「諮問型」にしているところでは、アイルランド、イギリス、フィンランド、フランス、ベルギー、オランダなどの国がある。

住民投票の法制化のために

 さて、フォーラム案のような法制化が実現したとしても、その執行にかかわる周辺法体制の整備をはかるという課題がある。多数の行政作用法ならびに行政手続法・行政手続条例と住民投票法との関係を再規定したり、地方自治法の一部改正も必要になってくる。
 膨大な作業になると考えられるこういった周辺法体制の整備も含め、広範な人々との議論を深めることによって、よりよい制度に仕上げていく必要がある。
 ただ、法制化を実現するための大きな壁が一つある。立法化のためには、これに賛同する国会議員を多数獲得しなければならないということだ。
 当然のことながら、住民投票や国民投票という直接民主制が導入されると、主権者の議会監視、議会制御が進み、肥大化していた議員の権限が縮小されることになる。彼らはそのことをよく理解しており、「改革派」の看板を掲げている議員でさえ、この法制化に背を向けたり、積極性に欠ける動きを見せたりしている。こういった議員を動かすためには、われわれ主権者が行動するしかない。最もわかりやすく言うなら、こういった法制化に反対する議員を議場から葬り去り、彼らに代わって賛同する人々を大量に議場へ送りこむということだ。
 これは、かなり難しい作業ではあるが、それこそ、巻町民や徳島市民がそうしたように、観客席にいる国民がグラウンドに下りて行動し、その正当性を理解するメディアがこれを強力に後押しすれば、法制化の可能性は開けると考える。
 今後、住民投票が広がるかどうかば、ここに示したような現行制度の欠陥を正す法制化が確立されるか否かにかかっている。もしそれが果たされれば、すでに大多数の国民は住民投票を活用したいと考えているのだから、行政施策や公共工事などをテーマに、おそらく日本のどこかの自治体で毎月のように住民投票が行なわれるようになるだろう。そして、4年に1度ではなく、自分たちの行動が毎日チェックされるようになる議員は、住民からの拒否権が成立するような行政施策をとることはできなくなる。
 いま、私たちが追求すべきなのは、議員の人格や政治的モラルを変えることだけではなく、民意を政治や行政に反映し得る制度を確立することなのだ。急ぎそれを果たさねば、市民は政治決定の場からますます疎外され、無力で無能な主権者もどきとなってしまうだろう。
 民主主義は努力して獲得するもの。この国はいま、正念場を迎えている。

住民投票に関する特別措置法(試案)
住民投票立法フォーラム
(2001年11月3日改訂)

  第一章 総則

 第一条[目的]
 この法律は、地方公共団体に関わる事項に住民の意思を的確に反映させる手続きを設けることにより、住民参加を促進し、もって地方自治の発展に資することを目的とする。
 第二条[適用]
 この法律は、普通地方公共団体、特別区及び広域連合(以下「地方公共団体」という。)に適用する。
 第三条
 この法律において「住民投票」とは、表決の投票及び発案の投票をいう。
 第四条
(1)この法律において「表決の投票」とは、特定の事案について住民に賛否の判断を求める投票で、次項に定めるもの以外のものをいう。
(2)この法律において「発案の投票」とは、条例の制定改廃を求めて条例案を提出し、当該条例案について住民に賛否の判断を求める投票をいう。
 第五条[住民投票管理委員会]
(1)この法律において住民投票に関する事務は、地方公共団体の住民投票管理委員会が管理する。
(2)地方公共団体の長は、この法律による住民投票を執行するために、住民投票管理委員会を設置しなければならない。
(3)住民投票管理委員会の設置及び運営については、条例で定める。
 第六条[投票資格者]
(1)この法律において「投票資格者」とは、第八条第一項の規定による住民投票の投票を行う資格を有する者をいう。
(2)地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者は、投票資格者とする。
(3)前項の選挙権を有する者とは、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第二十二条の規定による選挙人名簿の登録が行われた日において、選挙人名簿に登録されている者とする。
(4)地方公共団体は、第二項に定める者のほか、条例で定める者を投票資格者とすることができる。
 第七条[投票資格者名簿]
 住民投票管理委員会は、投票資格者名簿を調製しなければならない。


  第二章 住民投票

 第八条[住民投票の請求]
(1)地方公共団体の投票資格者は、当該地方公共団体に関わる事項(将来において当該地方公共団体に重大な影響を及ぼす事項を含む。)について、政令の定めるところにより、次の各号に掲げる数の連署をもって、地方公共団体の長に対し、住民投票の実施を請求することができる。
 一 投票資格者数が五十万以下の部分についてはその百分の十
 二 投票資格者数が五十万を超え百万以下の部分についてはその百分の八
 三 投票資格者数が百万を超える部分についてはその百分の五
(2)地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第七十四条第五項から第七項、第七十四条の二及び第七十四条の三の規定は、第一項による署名収集に準用する。(3)前項の場合において、地方自治法の規定中「条例の制定又は改廃の請求者」とあるのは「住民投票の請求者」と、「選挙権を有する者」とあるのは「投票資格者」と、「選挙管理委員会」とあるのは「住民投票管理委員会」と、「選挙人名簿」とあるのは「投票資格者名簿」と読み替える。
 第九条[表決の投票]
(1)表決の投票に付託する事項は、二者択一で賛否を問うものとし、かつ、住民が容易に内容を理解できるように設問を設定しなければならない。
(2)前条第一項の規定により表決の投票の請求があったときは、当該地方公共団体の長は直ちに住民投票管理委員会に通知しなければならない。
(3)前項の通知があったときは、住民投票管理委員会は当該事案を投票資格者の投票に付さなければならない。
 第一〇条[発案の投票]
(1)第八条第一項の規定により発案の投票の請求があったときは、当該地方公共団体の長は、当該請求を受理した日から二十日以内に議会を招集し、意見を附けて条例案を議会に付議し、その結果を同項の代表者に通知するとともに、これを公表しなければならない。
(2)前項の場合において、議会が当該条例案を否決したとき又は当該条例案の修正案を可決したときは、地方公共団体の長は直ちにその結果を住民投票管理委員会に通知しなければならない。
(3)前項の通知があったときは、住民投票管理委員会は、当該条例案及び当該条例案の修正案を投票資格者の投票に付さなければならない。
(4)前項の場合において、当該条例案が否決されたときは条例案に対する賛否を二者択一で問うものとし、修正案が可決されたときは原案と修正案のいずれに賛成するかを二者択一で問うものとする。
 第一一条[投票の執行]
(1)住民投票の期日は、第九条第二項又は前条第二項の通知があった日から九十日を経過し、一二〇日を超えない期間内の日曜日とする。
(2)住民投票管理委員会は、第九条第二項又は第十条第二項の通知があったときは、直ちに投票の期日、投票方法その他住民投票の実施に必要な事項を告示しなければならない。
 第一二条[広報]
(1)住民投票管理委員会は、前条第二項の告示後相当な期間内に、住民投票の請求の要旨、投票期日、投票方法を明記した広報を投票資格者に配布しなければならない。
(2)前項の広報には、住民の判断を助ける資料を掲載するように努めなければならない。この場合において、住民投票管理委員会は、投票に付託する事項に関する意見を公平に扱わなければならない。
 第一三条[情報公開]
(1)地方公共団体の長は、第八条第一項の請求があった場合には、請求に係る事案に関する行政上の資料を公開しなければならない。
(2)前項の場合において、地方公共団体の長は、法律又は条例により不開示とされた情報を含む資料についても、公益上必要があると認めるときは、これを公開することができる。
 第一四条[関連行政事務の一時停止]
 地方公共団体の長は、第八条第一項の請求があったときは、他の法令の規定にかかわらず、住民投票の結果が確定するまでの間、投票に付託する事項に関する一切の事務(その執行が明らかに投票結果に反することとならないものを除く。)を停止しなければならない。ただし、住民の生命、身体、財産に対する回復困難な損害を避けるために緊急の必要がある場合はこの限りではない。
 第一五条[投票の方法]
(1)投票資格者は、投票所において、投票資格者名簿又はその抄本の対照を経て投票しなければならない。
(2)住民投票は秘密投票とする。
(3)投票は一人一票とする。
(4)表決の投票は、賛否いずれかの二者択一とし、投票資格者は、設問に賛成するときは投票用紙の賛成欄に、反対するときは反対欄に自ら○の記号を記載し、投票箱に入れなければならない。
(5)発案の投票で条例案の賛否を問うものについては、投票資格者は、条例案に賛成するときは投票用紙の賛成欄に、反対するときは反対欄に自ら○の記号を記載し、自ら投票箱に入れなければならない。
(6)発案の投票で条例の原案と修正案の賛否を問うものについては、投票資格者は、原案に賛成するときは投票用紙の原案の欄に、修正案に賛成するときは修正案の欄に自ら○の記号を記載し、投票箱に入れなければならない。
 第一六条[投票の効力]
(1)投票の効力の決定に際しては、第二項の規定に反しない限りにおいて、投票した者の意思が明白であれば、その投票を有効とする。
(2)次の各号のいずれかに該当する投票は、無効とする。
 一 所定の投票用紙を用いないもの
 二 ○の記号を投票用紙の賛成欄及び反対欄のいずれにも記載したもの
 三 ○の記号を投票用紙の賛成欄又は反対欄のいずれに記載したのか判別し難いもの
 第一七条[投票及び開票]
 投票所、投票時間、投票管理者、投票立会人、代理投票、不在者投票その他住民投票の投票及び開票に関する事項については、公職選挙法の例に準じて条例で定める。
 第一八条[投票結果の確定]
 住民投票管理委員会は、投票結果が確定した場合には直ちにこれを告示し、地方公共団体の長及びその他の執行機関に報告しなければならない。
 第一九条[住民投票の結果]
(1)表決の投票の有効投票のうち、賛否いずれか過半数の結果が投票資格者の総数の三分の一以上に達したときは、地方公共団体の長及びその他の執行機関並びに地方公共団体の議会を拘束する。
(2)発案の投票で条例案の賛否を問うものの有効投票のうち、条例案に賛成する投票が過半数となり、かつ、投票資格者の総数の三分の一以上に達したときは、当該条例は成立したものとする。
(3)発案の投票で条例の原案と修正案の賛否を問うものの有効投票のうち、原案又は修正案のいずれか過半数の結果が投票資格者の総数の三分の一以上に達したときは、当該条例は成立したものとする。
(4)前三項の場合において、地方公共団体の長その他の機関に許認可等の処分を求める申請で当該許認可等をすることにより投票結果に反することとなるものがあるときは(既に処分が行われたものを除く。)、他の法令の規定にかかわらず、地方公共団体の長その他の機関は、当該申請を不許可としなければならない。
 第二〇条[再請求の制限]
(1)この法律による住民投票が実施された場合には、結果が告示された日から二年間が経過するまでは、何人も同一の事項について住民投票の請求をすることができない。
(2)この法律による発案の投票が実施され、条例が成立したときは、成立の日から二年以上が経過し、かつ、選挙により議員が改選されるまでは、地方公共団体の議会は、当該条例を廃止又は改正することができない。


 第三章 争訟

 第二一条[不服申立]
(1)住民投票の結果に不服がある投票資格者又は利害関係を有する者は、第十八条の告示の日から十四日以内に、当該住民投票に関する事務を管理する住民投票管理委員会に対して文書で異議を申し出ることができる。
(2)前項の規定により、市町村の住民投票管理委員会に対して異議を申し出た場合において、その決定に不服がある者は、その決定書の交付を受けた日から二十一日以内に、文書で当該都道府県の住民投票管理委員会に審査を申し立てることができる。
(3)前二項の規定により、住民投票の効力に関して異議の申出又は審査の申立てがあった場合において、本法及び条例の規定に違反することがあるときは住民投票の結果に異動を及ぼす場合に限り、当該住民投票管理委員会はその住民投票の無効を決定し、裁決しなければならない。
(4)第一項の異議の申出については、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第十一条から十三条まで、第十五条第一項第一号から第四号まで、第六号、第二項及び第四項、第二十一条、第二十四条、第二十五条、第二十六条、第二十八条から第三十一条まで、第三十六条、第三十九条、第四十四条並びに第四十七条第一項及び第二項の規定を準用する。
(5)第二項の審査の申立てについては、行政不服審査法第九条第二項、第十一条から第十三条まで、第十五条第一項第一号から第四号まで、第六号、第二項及び第四項、第二十一条から第二十六条まで、第二十八条から第三十一条まで、第三十三条、第三十六条、第三十九条、第四十条第一項及び第二項、第四十三条第一項並びに第四十四条の規定を準用する。
(6)前二項の場合において、行政不服審査法の規定中「処分庁」とあるのは、「当該住民投票に関する事務を管理する住民投票管理委員会」と読み替える。
(7)第一項の異議申出に対する決定はその申出を受けた日から三十日以内に、第二項の審査の申立てに対する裁決はその申立てを受けた日から六十日以内にこれをするように努めなければならない。
 第二二条[訴訟]
(1)前条第一項又は第二項による都道府県の住民投票管理委員会の決定又は裁決に不服がある者は、当該決定書又は裁決書の交付を受けた日から三十日以内に、当該都道府県の住民投票管理委員会を被告として、高等裁判所に訴訟を提起することができる。
(2)住民投票の結果に関する訴訟は、前条第一項又は第二項による都道府県の住民投票管理委員会の決定又は裁決に対してのみ提起することができる。
(3)前二項の規定により、住民投票の効力に関して訴訟の提起があった場合において、本法及び条例の規定に違反することがあるときは住民投票の結果に異動を及ぼす場合に限り、裁判所はその住民投票の無効を判決しなければならない。
(4)第一項による訴訟の管轄は、当該都道府県の住民投票管理委員会の所在地を管轄する高等裁判所の専属管轄とする。
(5)第一項による訴訟については、行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)四十三条の規定にかかわらず、同法第十三条、第十九条から第二十一条まで、第二十五条から第二十九条まで、第三十一条及び第三十四条の規定は準用せず、また、同法第十六条から十八条までの規定は、一の住民投票の効力を争う数個の請求についてのみ準用する。
(6)第一項による訴訟の判決は、事件を受理した日から百日以内にするように努めなければならない。
 第二三条[再投票]
(1)第二十一条の規定により住民投票を無効とする決定若しくは裁決が確定したとき、又は前条の規定により住民投票を無効とする判決が確定したときは、当該住民投票を管理する住民投票管理委員会は、再投票を行わなければならない。
(2)前項の場合において、再投票の期日は、第十一条の規定にかかわらず、当該決定若しくは裁決又は判決が確定した日から三十日を経過し、六十日を超えない期間内の日曜日とする。
(3)前二項の場合において、住民投票管理委員会は、直ちに投票の期日、投票方法その他再投票の実施に必要な事項を告示しなければならない。


 第四章 罰則

 第二四条[買収および利益誘導罪]
 次の各号に掲げる行為をした者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五〇万円以下の罰金に処する。
 一 賛否いずれかに投票をさせ若しくはさせない目的をもって、又は条例の原案と修正案のいずれかに投票をさせ若しくはさせない目的をもって、投票資格者に金銭、物品その他の財産上の利益を供与し、又は供応接待をしたとき
 二 前号の行為の申込み又は約束をしたとき
 三 賛否いずれかに投票をさせ若しくはさせない目的をもって、又は条例の原案と修正案のいずれかに投票をさせ若しくはさせない目的をもって、投票資格者に対し、利害関係を利用して誘導したとき
 四 前各号の行為に応じ若しくはこれを促したとき
 第二五条[詐偽投票及び投票偽造、増減罪]
(1)投票資格者でない者が投票をしたときは、一年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。
(2)氏名を詐称しその他詐偽の方法をもって投票し又は投票しようとした者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。
(3)投票を偽造し又はその数を増減した者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
 第二六条[投票の自由妨害罪]
 住民投票の実施に際し、次の各号の行為をした者は四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
 一 投票資格者若しくは投票運動者に対して暴行又は威力を加えた者
 二 交通若しくは集会を妨げ、又は演説を妨害し、その他不正な方法をもって投票の自由を妨害した者
 三 利害関係を利用して投票資格者又は投票運動者を威迫した者
 第二七条[署名運動妨害罪]
(1)地方自治法第七十四条の四の規定は、第六条第一項による署名収集に準用する。
(2)前項の場合において、地方自治法の規定中「条例の制定又は改廃の請求者」とあるのは「住民投票の請求者」と、「選挙権を有する者」とあるのは「投票資格者」と読み替える。
 第二八条[委任]
 この法律の施行に必要な事項は、政令及び条例で定める。

 〈住民投票立法フォーラム〉「住民投票に関する特別措置法」(住民投票法)の試案について
 住民投票に関する特別措置法(試案)

 
 
©2006- Direct Democracy Information Center All Rights Reserved.
Powered by 文系企画