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国民投票法に最低投票率を設けてはいけない理由
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   更新:2007/04/14
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国民投票法に最低投票率を設けてはいけない理由


2007年4月14日


◆最近、9条護憲派の人々やテレビのキャスターらが、国民投票法に最低投票率を(成立要件として)設けていないことがおかしいという発言を繰り返しています。
 私たちは、議論を重ねた後、こうした設定を憲法ではなく国民投票法の中に盛り込むことは間違いだと考え、みんなで作成した「市民案」の中にこのような条項を入れませんでした。この際、あらためてその理由を述べると同時に解説をしておきます。(本会事務局長 今井一)

 国民投票や住民投票の本来の意義は、ある案件に関して十分な情報を得ることを前提に、市民がよく学び、考え、話し合い、自らの良心にのみ従って結論を出すこと。そして、その多数をもって主権者の意思とし、政治や行政にその意思を反映することです。過去の事例が物語るように、この制度に例えば50%といった最低投票率を成立要件に加えると、自分たちが主権者の多数の支持を得られないと考える陣営が、投票権者に棄権を呼びかけ不成立に持ち込むことによって事実上の「勝利」を得る戦術に走ることがあります。

 例えば、イタリアにおいて1997年以降に行なわれたさまざまな法律廃止に係る国民投票においては、そうした運動が起こされています。また、国内においては2000年に徳島市で、2006年に岩国市で行なわれた住民投票において、そうしたボイコット運動が起こりました。いずれも投票率が50%を超さないと無効という要件が設けられていたのですが、このうち徳島と岩国で実施された住民投票については、両市とも「賛成派」は住民投票を無効にすることを狙ったボイコット運動に終始しました。そのため、本来望まれる賛否両派による活発な議論が行なわれず、その点では新潟県の巻町や刈羽村などで実施された住民投票とは違い、やや歪んだ住民投票になってしまいました。(添付資料AおよびB

 井原勝介岩国市長は後日、「千葉県我孫子市の市民投票条例のように、最低投票率ではなく絶対得票率でのハードル設定にすべきだった」と、50%ルールを盛り込んだ住民投票条例の制定を提案した自身の判断を省みられていますが、井原氏の言うとおり、例えば「投票した者の賛否いずれか過半数の結果が投票資格者総数の3分の1以上に達しなければ無効とする」というように、絶対得票率を成立要件とすれば、ボイコットは意味を持たなくなり、そうした運動は起きなくなります。

 主権者同士あるいは賛否両派の間で十分な議論が行なわれること。そして、能動的に政治参加をした主権者の意思が、政治や行政にきちんと反映されること。そのためには、手続法の中に最低投票率を設けることについて賛同できません。ただし、現行の96条など憲法の中にこうした規定を設けるのであれば、そうしたルール設定に反対はしません。なぜなら、そのための憲法改正、そのルール設定は主権者である私たちが国民投票によって承認することによって為されるのですから。

 諸外国においては、最低投票率を成立要件にしない国が多く、アイルランド、イタリア、スイス、フランス、スペイン、トルコ、ペルー、ウガンダ、イエメン、エジプト、オーストラリアなどがそうです。
 他方、ロシア、韓国、ウズベキスタン、カザフスタン、セルビア、ベラルーシ、ポーランドなどが有権者の50%以上の投票を成立要件としていますが、いずれも憲法においてそれを明記しています。

※ロシア連邦憲法第135条(3) ・・・新憲法草案は、憲法制定会議議員定数の3分の2以上の多数で可決されるか、または国民投票に付される。国民投票で、過半を超える選挙人が参加し、その過半を超える選挙人が賛成したとき、憲法草案は可決されたものとする。

※大韓民国憲法第130条(2) 憲法改正案は、国会が議決した後、30日以内に国民投票に付し、国会議員選挙権者の過半数の投票と、投票者の過半数の賛成を得なければならない。
(3) 憲法改正案が、第2項の賛成を得た場合には、憲法改正は確定され、大統領は直ちにこれを公布しなければならない。『( 解説世界憲法集』より抜粋)



 
 
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