トピックス
国民投票法本則施行までの「3つの宿題」の早期審議を求める声明
>>ホームへ
   更新:2008/07/25
 トピックス
 
【寄稿】国民投票法本則施行までの「3つの宿題」の早期審議を求める声明

 国民投票法の附則に定められた「3つの宿題」、即ち

(1)選挙権年齢、民法成年年齢等の引下げに関する法制上の措置(附則3条)、
(2)公務員の政治的行為の制限に関する検討(附則11条)、
(3)憲法改正問題についての国民投票制度に関する検討(附則12条)

は、衆参各院の憲法審査会において、憲法及び憲法関連基本法制の調査と並行して、検討の方向性について十分議論され、与野党間の幅広い合意が形成されることが期待されていた。

 しかし、改正国会法が施行され一年が経過したにもかかわらず、組織と運営の細目を定める「憲法審査会規程」が議決されていない。憲法審査会は法律上、形式だけ存在し、審議・議決機関としての実質的な機能を果たしていない。
 このように憲法審査会規程の不備が国会法違反の状態下にあって、「3つの宿題」はいずれも放置されている。(1)(2)に対しては、参院憲法特委で関連項目の附帯決議が付されており、審議を行っていないことの参院の違法性は衆院のそれと比べてより大きいと言わざるをえない。
 
 (1)については、憲法15条3項(公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する)を前提に、成年年齢を定める民法と、参政権(公職選挙権と国民投票権)年齢を定める公職選挙法、国民投票法はいずれも年齢において一致すべきであると解釈に則り、18歳への年齢引下げが検討課題となる。選挙人団、投票人団の概念、範囲を拡張するものとして、憲法上、非常に重要な意味を持っている。
 しかし、法制審議会民法成年年齢部会で現在、改正の「是非」につき議論されている内容、論点設定、議論の進め方等に対し、国会が何らチェック機能を果たしていない。立法者意思が無視され、成年年齢を現状のまま20歳とする結論も予想される由々しき状態である。

 (2)については、公務員が行う国民投票運動、憲法改正に対する意見表明、これらの表現行為に必要な行為を公務員の一般法、個別法で規律する「政治的行為の制限」規定から一律に排除し、国民投票法において例外的に地位利用によるものや特定公務員の運動を規制しようとした併合修正案の原案101条を改め(同条は削除され、現行法は条文が一つ前にずれた形になっている)、政治的行為の許容範囲を個別に検討する趣旨で設けられたものである。
 憲法改正案に対する賛否の勧誘の有無に関わらず、公務員が行う表現活動は、他の法的利益との調整の中で最大限保障されるべきである。許容行為と禁止行為の仕分けを個別に検討するといえども、この規定の本来的趣旨が法律案の本則から附則11条へと移動した政治的経緯、原案との相違点が必ずしも十分解明されないまま今日に至っている。

 (3)については、憲法改正問題国民投票が、本番の憲法改正国民投票に先立つ有権的世論調査として、憲法改正の要否を問うものとして想定されている。不合理な憲法改正発議を避け、通常の国政選挙から無用な憲法論議を排するためにも、憲法改正問題国民投票の意義は評価されるべきところ、その必要性の有無も含め、速やかに検討を行うとされながら、全く議論がなされていないことは大変遺憾である。

 (1)~(3)はいずれも、市民が憲法改正権を行使する際に関わる重要な前提問題を含むものである。経過期間中には、衆参各院の憲法調査会報告書(2005年4月)の内容を精査しながら、将来の原案発議に向けた調査を始めることも無益ではないが、まず着手すべきは「3つの宿題」についてであり、一定の結論が得られるよう、あらゆる政治的努力を重ねていくことである。国民投票法案の審議でも同趣旨のことが言われたように、「3つの宿題」で合意ができない状況で、憲法改正(原案)の発議において、院内の幅広い合意が得られる可能性は低いと考えなければならない。

 「3つの宿題」を担当すべき憲法審査会が立ち上がらない責任は、もはや特定の議員、政党ではなく、衆参両院全体に及んでいると考えられる。専ら議院内部の問題でありながら、国権の最高機関、唯一の立法機関としての権威に関わること、さらには市民の憲法改正権に関わる憲法上の重要な論点につき何ら配慮が示されず、憲法審査会規程をめぐる政争が、見えざる手によって沈静化することを待つかのようである。まさに国民主権主義、民主主義に対して国会自らが抵抗しているかのように映る。

 憲法審査会に「立憲主義の番人」としての機能を与え、活動のエネルギーを吹き込む源泉は、憲法の正当性を支える我々市民において他ない。「3つの宿題」が終わらない限り、新たなフェーズは展開しない。立法府におけるこの不作為を度外視して、2010年以降の憲法改正発議を想定することなど空理空論である。

 

2008年7月21日 
南部義典 
http://blog/livedoor.jp/nambu2116/



 
 
©2006- Direct Democracy Information Center All Rights Reserved.
Powered by 文系企画