トピックス
投票人名簿システム構築交付金について
>>ホームへ
   更新:2009/03/17
 投票人名簿システム構築交付金について
 憲法改正の手続きを定める国民投票法は、2010年5月18日に施行されます。
 「3月議会」開会中の自治体議会ですが、財務省原案が閣議決定されたことを受け(2008/12/24)、総務省から全国の市区町村に対して、投票人名簿システム構築交付金(以下、交付金と略)の内示が行われています。

 総務省は、すべての自治体に総額46億2400万円を交付。例えば、昭島市の場合176万円が交付されていますし、西東京市は286万7千円、福生市は241万5千円、大阪府の箕面市は276万2千円です。

 この件について、会の内外から多くの問い合わせをいただきましたので、制度の簡単な説明を南部義典さんにお願いしました。
 また、昭島市議の大嶽貴恵さんにも自治体議員の立場から現場の状況について報告してもらいました。
準備のための準備~投票人名簿システム構築交付金について~ 南部義典
国民投票の経費が予算化される! 大嶽貴恵

準備のための準備
~投票人名簿システム構築交付金について~
南部義典(大宮法科大学院大学)
http://blog.livedoor.jp/nambu2116/
1.はじめに

 平成21年度政府予算案は現在なお国会で審議中ですが、財務省原案が閣議決定されたことを受け(2008/12/24)、総務省から全国の市区町村に対して、投票人名簿システム構築交付金(以下、交付金と略)の内示が行われています。これまで交付金の意義、使途等をめぐって、多くの方から問い合わせをいただきましたので、制度の簡単な説明とコメントを加えたいと思います。

2.投票人名簿システムの構築の必要性

 憲法改正の手続きを定める国民投票法は、2010年5月18日に施行されます。法施行日以降は、国会で憲法改正を発議し、周知広報の期間を置いて、国民投票を実施することが可能となります。
 国民投票法は、国民投票が行われる場合の、市区町村が行うべき事務を定めています。その一つが、投票人名簿の調製です。投票所入場券の発送作業を始める頃には投票人名簿が確定していなければなりません。国民投票期日の直前に調製していては間に合いません。

 名簿が必要であるなら、市区町村が選挙用に随時調製している選挙人名簿を使えばいいのではないかという意見もあるでしょうが、実はそうはいかないのです。

 投票人名簿には、国民投票が行われる期日現在で年齢満18歳以上の日本国民(成年被後見人を除く)で、被登録資格を充たすものについて行われます。
 被登録資格は、いつの時点で、どこの市区町村の住民基本台帳に登録されているのかということに関わりますが、選挙人名簿ではいわゆる3か月要件が被登録資格として定められているのに対し、投票人名簿にはそのような要件はありません。また消極的要件として、判断能力のない常況にある成年被後見人を除いているのは共通していますが、選挙人名簿は、さらに禁錮以上の刑を処せられ、公民権が停止されている者も除いています。
 以上より、投票人名簿は、選挙人名簿とは内容的に異なるということがご理解いただけると思います。

 もっとも、投票権年齢(積極的要件)については、現時点においては公選法9条(20歳以上)と国民投票法3条(18歳以上)で差異が見られますが、法施行までの間にしかるべき法制上の措置(公選法改正)が行われ、18歳で一致することになるというのが、立法担当者の見方です。別稿でも述べていますが、国民投票の投票権年齢と、公職選挙における選挙権年齢は、参政権的権利として一致していなければならないと伝統的に考えられてきています。両者が不一致のまま国民投票が実施されることはありえません。

 また、名簿を調製する時期についても、投票人名簿は、国民投票が行われる場合、市区町村の選挙管理委員会が調製することとなっています。投票人名簿の調製は、数年に一回、数十年に一回というタイミングにならざるを得ません。

 国民投票の実施前には、市区町村において投票人名簿を調製する必要があり、投票人名簿を調製するためには、そのためのシステム(プログラム)が必要となります(下図)。

投票人名簿システムの構築(準備のための準備)→投票人名簿の調製(国民投票の準備)→国民投票

 投票人名簿システムを構築することと、投票人名簿を調製することとを、混同しないで下さい。事務内容はおろか、時間軸がまったく異なります。システムの構築は、言わば準備のための準備として行われるものです。

3.交付金の意義

 国民投票の準備、実施に係る経費はすべて国庫負担となっていますので(地方財政法10条の4、国民投票法136条)、交付金として市区町村に交付されます。

 交付金の総額は、46億2,400万円に上ります。ほとんどの市区町村において、選挙人名簿システムが構築されていますが、名簿調製の仕様は様々です。新たに投票人名簿システムを構築するとした場合、住民情報システムの中に、選挙と同様、国民投票に関するシステムをつくるのか、あるいは住民情報システムとは別の名簿管理システムとして、投票人名簿を調製し管理するシステムをつくるのか、その対応は市区町村ごとに異なります。市区町村がどういうシステム変更をした場合に、交付金が交付されるのか、総務省において今後詳細が検討され、市区町村に対し周知されることになります。

 交付金は、平成21年度、平成22年度の2年度に跨って交付されます。但し、規模の小さい自治体は、21年度のみで交付が済むケースもあります。

 総務省は、市区町村が構築した投票人名簿システムが適正なものになっているかどうか、監査することにもなっています。監査のための予算が、交付金とは別に2,300万円計上されています(庁費扱いで、交付金ではありません)。交付金を交付してそれで終わりではなく、交付金の使途が適正であったかどうか、事後的にチェックがなされる仕組みです。

4.おわりに

 国民投票制度に係る予算が執行されるからといって、憲法改正のスケジュールを(意図的に)早めるものであると考えるのは邪推です。総務省は上記交付金のほかにも、様々な周知・広報事務を予定していますが、投票の管理・執行という中立的立場で、現時点で必要とされる経費を粛々と執行するに過ぎないということを付言しておきます。

(2009/03/17)

国民投票の経費が予算化される!
大嶽貴恵(昭島市議会議員)


 現在、どこの市議会も3月議会真最中。定額給付金、子育て特別手当が注目されている中、予算書には、「投票人名簿システム構築交付金」という歳入科目で、来年5月の国民投票法の全面施行を控え、投票人名簿を調製するためのシステム構築の経費が計上されています。総務省は、全国の自治体に総額46億2400万円を交付する予定です。例えば、西東京市は286万7千円、福生市は241万5千円、大阪の箕面市は276万2千円です。自治体によっては、システム構築が長期にわたる団体もあることから、2010年度にも17億9800万円の交付を予定しています。原則として、21年度は名簿システム構築のプログラム開発を行い、22年度は運用テストを開始する予定となっています。
  昭島市の場合、投票人名簿システム開発委託として176万円が予算に計上されています。 国民投票が行われる場合、投票人名簿がまったく新規に調製されることになりますが、既存の住民情報システムとの関係の中で、今回どのようなシステム改修をしようとしているのか、予算委員会の中で質問をしても、自治体の担当者は、今回の交付金の意義はおろか、国民投票制度についての知識が乏しいことが判明しました。「選挙は50日前に住民票がなければ投票できないが、国民投票は投票日前日に転入しても投票できなければならない、国民の権利だ」と答弁するものの、「(投票は18歳以上のはず)民法や公職選挙法など法整備が進まない中、どのように構築をするのか。」など聞いても答えられません。投票人名簿の被登録資格すらも知らない状況です。総務省からは、まだ作業の内容は出ていません。しかし市民一人ひとりに一番近いはずの基礎自治体の情報のなさに驚きました。また昭島市の場合、予算書の説明には、『国民投票のための』システム構築と明記されていません。予算化されていることを、見過ごしてしまうところでした。ぜひ自分の自治体の予算書を見てください。
  今回の国からの自治体への交付金は、投票人名簿の調製を将来行うための、システム構築が目的です。例えば自治体で将来、「家」を建築しようとしているとすると、投票人名簿はその「設計図」に相当します。今回の交付金は、設計図そのものを作ろうとするものではなく、設計図をつくるための「プログラム」を作る事前作業です。2009年度以降、国民投票の準備のための作業が自治体で行なわれます。
  憲法改正国民投票への準備は、基礎自治体で粛々と進んでいます。

(2009/03/17)

 
 
©2006- Direct Democracy Information Center All Rights Reserved.
Powered by 文系企画