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滋賀県安土町での町長解職請求について
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   更新:2009/08/05
 滋賀県安土町での町長解職請求について
 当サイトでもご紹介している通り、総選挙の1週間前、8月23日に滋賀県安土町で町長解職の賛否を問う住民投票が実施されます。
  すでに同町と近江八幡市との合併は議決されており、たとえ現町長がリコールされ合併反対派の人物が新しい町長となっても合併を撤回することはできません。そのため、このリコール請求について首を傾げる人は少なくありません。
  どうやら、この問題の本質は「合併の是非」を町民に聞かず、町長と議会だけで決めたことにあるようです。そこで、この問題について、かつて滋賀県米原町長として合併に関する住民投票を執行した村西俊雄(現愛荘町長で本会の前代表)、西川敏輝(現滋賀県議で本会の前事務局長)の両氏に解説してもらうことにしました。問題をきちんと把握した見解・解説です。読んでみてください。

信 念 と 民 意
滋賀県愛荘町長 村西俊雄


 先般、渦中の安土町長談話を読んで、私も同じ立場の一人として「為政者の信念」について考えさせられた。
 彼は、安土町の現状と将来を考えたとき、住民が安心して住めるまちを残すことは今、私たちの責任であり、近江八幡市との合併を実現することが最善の選択なのだ、と信念をもって語っている。
 「安土町」の名を残さんがために、住民の暮らしまでも犠牲に出来ないと考えている。
 そこには、誰が何を言おうとも、間違いのない歴史的判断に基づく決断と確信に満ちている。
 住民の将来に思いを致し、心血を注いで事に当たることは為政者として、誰もかわりはない。
 しかしながら、合併問題のような重要課題の決定は、そのプロセスが大事だと思う。
 私が米原町長のとき、将来の住民生活に重大な影響を及ぼすこの合併問題のあり方は、町長と議会だけで決めるものでなく、みんなで議論し、悔いのない選択をすること、それが町長としての信念であった。
 先に結論ありきでなく、正解のない問題として、その解決方法は最終的に、「住民投票」という手段を選択することとなった。
 当時でも、それは責任回避だと言う声もあったが、町長としての合併選択肢も明らかにしたうえで、住民に意思を問うべきと考えました。
 米原のときも、民意は割れていましたが、住民投票を実施したことによって民意が統一でき、その後の合併問題の解決に大きな力となりました。
 今回の安土の場合も民意が割れているが、住民の意思を直接民主主義の理念で確かめておく方法もあったと思われる。
 近江八幡市との合併は、すでに県議会でも議決され、町長の解職の賛否を問う住民投票の結果に左右されることなく、法的に淡々と進められる。
 合併は新しいまちに生まれ変わるところに意味がある。
 そのためには、市民が意欲をもって参加できるまちにならなければ、力が発揮できない。
 合併後、旧安土町民に深いトラウマが残らないか、心配だ。

(2009/07/20)

安土町の合併問題について
滋賀県議会議員 西川敏輝


 7月16日、県議会最終日に「近江八幡市・安土町の廃置分合の承認を求める議案」が賛成多数で可決され、実質的に合併は成立しました。6月半ばに両市町の議会議決がなされた後、安土町の住民さんから「町長リコールの結果が出るまで県議会は継続審査にして欲しい」との手紙や葉書をたくさん頂き、私も本当に悩みました。8月23日の住民投票が「町長リコール」でなく「合併の是非を問う」ものであれば、私も9月議会までの継続を主張したと思います。合併反対派の方の手紙にもあったように、「リコール」は、合併を推進する津村町長の強引な手法に反対するものであり、賛成派も署名をしておられます。そうなると、例え町長が失職しても、それは、津村町長の非民主的な町政運営に対して町民が「ノー」を示したことであり、合併への賛否はまた別と言うことになります。出直し町長選や議会の解散、町議選などを経ない限り合併に対する住民意思は明らかになりません。結論が出るまでに相当な期間を要します。一方、県に申請された「廃置分合」の手続きに法的な瑕疵はありません。苦渋の選択ではありましたが、私は賛成の道を選びました。

 ただ、住民の4割にも及ぶ署名を集めた「住民投票条例」を否決した町議会や反対の意見を付けた津村町長の責任は大きいと思います。私も米原町議時代に当時の村西町長と共に合併問題で住民投票を仕掛けましたが、これは、「町の将来に大きな影響を及ぼす案件については住民の判断に委ねよう」との思いからでした。合併後いろいろ難題はありますが、合併したことについて住民からの批判はありません。それは、「自らが選んだ道」との思いがあるからでしょう。首長も議員も住民から白紙委任状をもらっているわけではありません。当選の要因は、地縁、血縁、同級生や人柄、政党、政策など様々です。個別の案件で、自分に投票してくれた有権者と考えの違うことはいくらでもあります。この間接民主主義の隙間を埋めるのが「住民投票」です。重要案件を直接住民に問うことは住民の行政への参加意識を大いに高めます。当時の米原町民は、合併問題に対する認識がどの地域よりも高かったと思います。日本が成熟した民主主義国家になるためには、欧米諸国のように住民投票をもっと活用する必要があります。そして、一定数の署名が集まれば議会が拒否できなくするべきです。

 また、米原町では町長提案を議会が可決しましたが、本来は住民の直接請求が望ましいと思います。この最も望ましい形でなされた安土町の直接請求が簡単に否決されたことは残念でなりません。できれば、前回の町議選や町長選で候補者に住民投票に対する公開質問状を突き付けて、理解のある候補者を当選させるべきだったと思います。

 次に、合併問題についてですが、合併はあくまで手段であって目的ではありません。20年、50年後の我が町をどうするのか、どうなるのかの議論が最も重要です。行政は、合併する場合、しない場合のシミュレーションを公平に、住民に分かりやすく示す必要があります。また、住民も勉強し行政に対案を出すくらいの気概が必要です。安土町の反対派の主張には「合併しない場合の安土の将来ビジョン」が弱かった気がします。交付税が削減され財政が厳しくなっても、行財政改革をしっかりやって、負担増に耐えて、行政・住民との協働で安心のまちづくりができることを、具体的に示す必要があったのではないでしょうか。

 しかし、安土町と言う小さな町でこれだけの住民運動が起こったことは高く評価されるべきですし、近江八幡市になってもこの民主的な機運を全市に広げて行って欲しいと思います。幸い、近江八幡市は、自治基本条例の中で「常設型の住民投票」を謳っています。これを有効に活用して、住民投票の先進市、住民参加の最も進んだ、新市・近江八幡市となることを心から願っています。

(2009/07/20)

 
 
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