「地方自治法の一部を改正する法律案」が、3月中旬、国会に上程される予定です。これは、議会制度、議会と長の関係、直接請求、住民投票制度の創設、国等による違法確認訴訟制度の創設など、「地方自治の本旨」の核心に係る重要な改正内容を含んでいます。
中でも、住民投票制度の創設は、地方自治のあり方について世論を喚起し、住民投票法制の抜本改革の契機となるものです。「実施必至型の直接請求」を十年以上にわたって追求してきた私たちは、住民投票制度が本格的に検討されることで、改革がスムーズに進捗するものと意を強くしています。
私たちはこれまで、住民投票に関して、実施を求める住民意思がことごとく無視され、軽視される数多のケースを現場で目撃してきました。
住民投票条例の制定を求め住民が請求に必要な法定数をはるかに上回る署名を集めて直接請求をしても、議会が否決し、住民投票が行われることなくそのまま終結してしまったり、その都度又は常設型の住民投票条例が施行されている自治体でも、住民の実施請求に対し議会、首長が拒否することが、地域を問わず、当然のように続けられてきたのです。さらに、住民投票の結果が確定したにもかかわらず、首長がその結果を尊重しないといった事例もありました。
住民投票は、住民意思を自治体行政に貫徹させ、市民自治及び住民主権を具現化する最も有効な手段です(納税者視点では、住民サービスの受益と負担の関係がより明確になるといえます)。各自治体が条例制定に向け独自の取り組みを展開することと同時に、上記のように一定の住民意思が住民投票の実施に結びつかない問題を解決するために、(間接・直接)イニシアティヴ、レファレンダムの導入、投票結果の法的拘束力の付与に関する立法措置(改革の先取りとなるような根拠付け)が必要であると、私たちは訴え続けているのです。(⇒ 情報室案)
この点、政府で現在されている改革案は、
(1) 直接請求制度についてリコール請求の必要署名数を緩和すること、地方税の賦課徴収等の 除外規定を削除すること、
(2) 住民投票制度の創設について、大規模な公の施設の設置について、条例による住民投票を可能とすること(条例で定める大規模な公の施設の設置を議会が承認した後、住民投票を実施し、住民投票で過半数の同意がなければ、当該施設は設置できない)
です。しかし、これ以上の制度骨格は明らかでなく、住民意思が重視されるシステムへと根本的に変わりうるのかどうか、不明です。
私たちは過日、(1)(2)に関する疑問、論点について、片山総務大臣宛、公開質問状を送付しましたが、2月28日の期限を過ぎても、正式な回答はありません。政府でどのような検討が行われているのか、内容はもちろん、手続的な進行状況まったく分からない状態です。全国知事会など利害関係者からも「反対意見」が相次ぐ中、決して予断を許す状況ではないと思料します。
国会提出まで、わずかな期間が残されているに過ぎません。
政府においては、「住民投票制度の拡充」という根本姿勢を見失うことなく、改正案の立案作業を進めていくことを強く要望します。(了)
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