イヤでもわかる!
  国民投票法案
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   更新:2007/02/10
 イヤでもわかる!国民投票法案
南部義典
「そもそも国民投票法案ってどういう内容なの? 何が問題になってるの?」
与党案と民主党案は何が一致し、何が対立しているのでしょう?
これを読めば、あなたも国民投票法案がイヤでも解ってしまいます!
第1回  国民投票法案のこれまで (2006/12/15UP)
第2回  憲法審査会とは?(2006/12/26UP)
第3回  発議は分かりやすく(2007/01/10UP)
第4回  有権者に届くパンフレット(2007/01/25UP)
第5回  満18歳で成人? 将来はこんな見直しも(2007/02/10UP)
第6回  国民投票運動ができない人(2007/02/10UP)
第7回  スポットCMの功と罪(2007/03/01UP)
第8回  買収はダメ?(2007/03/01UP)
第9回  過半数の承認と投票用紙への記載方法(2007/03/01UP)
第10回  当日、投票所に行けない人は?(2007/03/01UP)
第11回  憲法改正以外の国民投票(2007/03/15UP)


第5回 満18歳で成人? 将来はこんな見直しも

1.はじめに

 こんにちは。1月25日、第166回通常国会が召集されました。参院にも憲法調査特別委員会が設置され、国民投票法成立に向けてのカウントダウンが始まりました。
 今回は、「満18歳で成人?将来はこんな見直しも」と題し、国民投票法制の隠れた重要論点(?)である成人年齢法制の見直しについて解説します。

2.本則で18歳、附則で20歳?

 まず、国民投票の投票権年齢について確認しましょう。
 与党案(※1)、民主党案ともに、法律案の本則で、満18歳以上の日本国民に投票権を与えることとしています。
 憲法改正案に対する国民投票の[承認/不承認]の効果は、その先何十年、何百年と続きます。憲法と時代を共有する多くの若い世代に、できるだけ投票資格を認めるべきであるという議論を反映したものです。
 
 しかし、法律案の附則には、3年の経過期間中に公職選挙法の改正が行われ、選挙権年齢が満18歳以上となるまでの間は、国民投票の投票権も満20歳以上とすることが定められています。18歳であろうが、20歳であろうが、国民投票の投票権と国政選挙の選挙権を一致させるという前提で制度設計されています。
 
 なぜなら、国会の定める選挙の際行はれる投票において国民投票が実施されることは、国民投票と国政選挙とが同一の有権者によって行われることを憲法が想定しているからです(憲法96条1項後段)。
 
 国民投票法の成立後、直ちに公選法改正が行われるか、経過期間満了ぎりぎりになってそれが行われるかは分かりません。経過期間中は国民投票法本体が効力を有しないので、満20歳以上という現状において国民投票が実施されることはありません。
 
 経過期間が過ぎても改正公選法が施行されていなかったらどうなるかという問題が提起されたことがありました。結論として、このような状態の下で「総議員の3分の2以上」という国会内合意が得られることはなく(憲法改正発議は行われない)、まずは改正法の施行を待つことになるでしょう。

3.成人年齢法制の現状

 法律には、一定の年齢を基準として、国民に権利を付与したり、義務を課したりする場合があります。例えば、6歳未満の者は運賃が無償とされたり、30歳以上に参院選挙の被選挙権が与えられたり、65歳以上に年金が支給されたりと、さまざまです。
 
 国民投票法制の議論を契機として、参政権に限らず、成人年齢法制を全体的に見直すべきではないかとの機運が高まってきました。
 
 ところで、成人年齢法制とは何ですか?というメインテーマに関してですが、これを明確に定義したものは見当たりません。
 もっとも、民法4条が、年齢20歳をもって、成年とすると規定していることから、

(1)20歳を基準としている法律、
(2)成年者・未成年者を基準としている法律

  の総称と、一応定義しておきます。

 (1)は、「20歳」と条文上定められていることから、形式的にはこちらが成人年齢法制の見直しの対象となりえます(図参照)。
 (2)は、[成年者/未成年者]という区分を採っています。民法4条が18歳と改正されることにより、その影響を受ける法律です。
 例えば、競馬法28条は「未成年者は、勝馬投票券を購入し、又は譲り受けてはならない」と定めていますが、民法改正によって、18歳で購入OKということになります。

20歳(満20年)で区別する法律リスト
 
法律名
1
民法
2
未成年者喫煙禁止法
3
未成年者飲酒禁止法
4
恩給法
5
船員保険法
6
児童福祉法
7
地方自治法
8
少年院法
9
少年法
10
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
11
犯罪者予防更生法
12
地方税法
13
国籍法
14
公職選挙法
15
相続税法
16
旅券法
17
国家公務員災害補償法
18
船舶職員及び小型船舶操縦者法
19
社会保険審査官及び社会保険審査会法
20
厚生年金保険法
21
売春防止法
22
引揚者給付金等支給法
23
租税特別措置法
24
国家公務員共済組合法の長期給付に関する施行法
25
国家公務員共済組合法
26
銃砲刀剣類所持等取締法
27
国民年金法
28
道路交通法
29
児童扶養手当法
30
地方公務員等共済組合法の長期給付等に関する施行法 
31
地方公務員等共済組合法
32
特別児童扶養手当等の支給に関する法律
33
母子及び寡婦福祉法
34
所得税法
35
地方公務員災害補償法
36
引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律
37
沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律
38
国際捜査共助等に関する法律
39
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
40
社会保障に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律
41
社会保障に関する日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律
42
鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律
43
国際受刑者移送法
44
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律
45
社会保障に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律
46
刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律


4.見直しは進むか?

 国民投票法案の附則には、「選挙権年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」との、法制上の措置事項が定められる予定です。
 論点は二つあります。

論点1−対象となる法律
 まず、成人年齢法制の見直しの対象です。民法、公選法は問題ないにしても、その他の法令をどこまで対象とするかです。
 若い世代に政治参加の機会を拡げる、あるいは市民社会の中で活動できる範囲を拡げることが容認できるとしても、同時に、飲酒、喫煙、大型車の運転免許、狩猟免許、国民年金の加入年齢なども一律に、形式的に18歳に引き下げていいのかどうか――ちょっと無理がある気がします(※2)。
 刑法上の完全な責任非難を受けうる能力も、別の観点からの議論が求められます(少年法)。

論点2−所管委員会と所管省庁
 成人年齢法制の見直しを、主として誰が所管するかという問題です。問題提起は衆院憲法特委からですが、主たる所管を決めているわけではありません。憲法審査会(→第3回)ですべて扱うことは困難でしょう。
 法律は基本的に所管委員会(国会)と所管省庁(内閣)が決まっていますので、改正が進んだり進まなかったり、縦割り対応の弊害がでるおそれも否定できません。
 成人年齢改正一括法(仮称)の制定は簡便なようで、意外と非現実的です。

成人年齢法制の見直しは、実社会に大きな影響を与えます。「はたちの献血」というコピーも、過去のものとなってしまうのでしょうか。


(※1) 衆院憲法特委(2006年12月14日)における、船田元・与党案提出者(自民)の締めくくり発言。
(※2) 国民年金加入年齢については、むしろ引き上げるべきとの意見があります(与党幹部)。


※私のブログでは「憲法改正手続法案」という略称を用いていますが、本連載ではあえて、通称である「国民投票法案」とさせていただきます。
<<弟4回 有権者に届くパンフレット 第6回 国民投票運動ができない人>>
第1回  国民投票法案のこれまで (2006/12/15UP)
第2回  憲法審査会とは?(2006/12/26UP)
第3回  発議は分かりやすく(2007/01/10UP)
第4回  有権者に届くパンフレット(2007/01/25UP)
第5回  満18歳で成人? 将来はこんな見直しも(2007/02/10UP)
第6回  国民投票運動ができない人(2007/02/10UP)
第7回  スポットCMの功と罪(2007/03/01UP)
第8回  買収はダメ?(2007/03/01UP)
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第10回  当日、投票所に行けない人は?(2007/03/01UP)
第11回  憲法改正以外の国民投票(2007/03/15UP)

筆者プロフィール
南部 義典(なんぶ よしのり)
1971年岐阜県生まれ。京都大学文学部卒業。同大学院在学中に、国会議員政策担当秘書資格試験に合格。2005年から、憲法改正国民投票法制の論点整理作業に携わる。自身のブログ「南部義典の国民投票つれづれBlog」(http://blog.livedoor.jp/nambu2116/)を日々更新中。
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  (武田真一郎 2010/08/06)

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