イヤでもわかる!
  国民投票法案
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   更新:2007/03/01
 イヤでもわかる!国民投票法案
南部義典
「そもそも国民投票法案ってどういう内容なの? 何が問題になってるの?」
与党案と民主党案は何が一致し、何が対立しているのでしょう?
これを読めば、あなたも国民投票法案がイヤでも解ってしまいます!
第1回  国民投票法案のこれまで (2006/12/15UP)
第2回  憲法審査会とは?(2006/12/26UP)
第3回  発議は分かりやすく(2007/01/10UP)
第4回  有権者に届くパンフレット(2007/01/25UP)
第5回  満18歳で成人? 将来はこんな見直しも(2007/02/10UP)
第6回  国民投票運動ができない人(2007/02/10UP)
第7回  スポットCMの功と罪(2007/03/01UP)
第8回  買収はダメ?(2007/03/01UP)
第9回  過半数の承認と投票用紙への記載方法(2007/03/01UP)
第10回  当日、投票所に行けない人は?(2007/03/01UP)
第11回  憲法改正以外の国民投票(2007/03/15UP)


第7回 スポットCMの功と罪

1.はじめに

 こんにちは。今回は「スポットCMの功と罪」と題し、スポットCM規制に対する論点を考察します。

2.スポットCMとは?

 スポットCMとは、テレビやラジオで放送時間の指定なく放送されるCMをいいます。番組中に放映されるもの(PT/パーティシペーション)と、番組と番組の間に放映されるもの(SB/ステーションブレイク)があります。
 スポットCMの契約料は、一般に明らかにされていません。
 
 法案によれば、テレビやラジオを利用した国民投票運動のための広告放送と定義されるものが規制の対象です。「国民投票運動のための」というのがポイントです。
 第6回で確認したように、国民投票運動と(国民投票運動に該当しない)一般的意見表明は違います。したがって、憲法改正案に対し[賛成/反対]を表明するだけのような、一般的意見表明のための広告放送は規制の対象ではありません。
 但し、両者の区別は微妙な場合があります。

3.スポットCM規制の考え方

 そもそも憲法21条は、民主主義社会、民主政の自由かつ健全な発展のため、表現の自由を保障し、優越的地位を与えるとともに(1項)、公権力による検閲を禁止しています(2項)。
 もし、国民投票広報協議会のような公権力が、CM内容に直接立ち入って考査し、出稿の可否の判断をしたり、放映回数や時間帯などをコントロールすることになれば、それはまさに表現内容や表現方法に介入することになるか、少なくともその余地を与えてしまいます。
 したがって、CM内容に中立的でない介入は憲法上疑義があるとされ、法制上は想定されていません。

 スポットCM規制は、以下の三つの考え方に分けられます。

[1]全面法規制説
 憲法改正の発議後、投票期日に至るまで、一切のスポットCMを法的に禁止する説です。
 理由(1) スポットCMには、制作費・放映費ともに莫大な費用がかかる。資金量の多寡によって、憲法改正案に対する[賛成/反対]の意見広告がどちらかに偏るおそれがあり、視聴者の判断を誤らせる。
 理由(2) 消極的意味において(⇒CMが流れない)、[賛成/反対]の意見広告は対等となる(ゼロの公平)。
 理由(3) 自主規制に委ねるとしても、[賛成/反対]の意見広告が平等の量になることを担保できるわけではない。メディア業界にそれを求めるのは無理である(※)。

[2]全面自主規制説
 発議後、スポットCMに関しては放送メディアの自主的取組みに委ねるべきとする説です。
 理由(1) 意見広告主の広告表現の自由の保障を最大限保障すべきである。
 理由(2) 視聴者の知る権利を侵害するような規制はすべきでない。[賛成/反対]の意見広告は、自由市場において評価、淘汰されるべきものである。
 理由(3) ネット広告、雑誌広告、交通広告などさまざまな媒体がある中、放送広告だけを規制の対象とする根拠が薄弱である。
 理由(4) 放送メディアには、放送法による規制だけでなく、CMに関する審査基準が定められ、適正に運用されている。国民投票CMに関しては、通常のCM考査とは違う基準を定める用意がある。

[3]折衷説
 投票期日前、一定期間のスポットCMを禁止する説です。
 理由(1) 投票期日直前に行われるCMは、扇情的効果で世論が流されることがある。熟慮のための、一定の冷却期間が必要である。
 理由(2) 投票期日直前に行われるCMに反論をしようとしても、それに十分な期間が確保できない。
 理由(3) 一定期間禁止することは、スポットCMを放映できる期間を限ることに他ならない。間接的に総量規制効果を及ぼすことができる。

 主に、公権力やメディアによる規制の意義と効果を疑問視する立場からは、意見広告主(主として政党)による自主的なルールづくりを志向すべきとの意見が出されています。

4.与党案・民主党案はどうなっているか?

 スポットCM規制は、広告主の表現の自由の保障、憲法改正案に対する[賛成/反対]意見広告の量的平等の確保、スポットCMが視聴者に与える影響等、さまざまな判断基準・要素を勘案して決せられる問題です。
 
 与党案、民主党案ともに、[3]折衷説に立っています。国民投票の期日前7日に当たる日から国民投票の期日までの間に、何人もスポットCMを行うことはできません(与党案106条、民主党案104条)。本条違反の場合でも、罰則はありません。
 
 より総量規制効果を上げるために、与党案は投票期日14日前までに延ばす旨の修正がなされる予定です。
 民主党案については、投票期日14日前までに延ばすか、発議後は全面禁止とすべきかということについて、さらに修正が検討される予定です。


(※) 一度に3つの憲法改正案が発議された場合を想定してみます。ある広告主は、A案は賛成、B案とC案は反対という内容のCMを、別の広告主はすべて賛成のCMを、さらに別の広告主はC案だけ賛成するCMを放映しようとしている場合など、[賛成/反対]意見広告の量を平等に調整することはかなりの困難が伴います。また、広告主の数に当初からアンバランスがあった場合、メディアの自主規制で量的平等を確保することにも疑問が呈されています。


※私のブログでは「憲法改正手続法案」という略称を用いていますが、本連載ではあえて、通称である「国民投票法案」とさせていただきます。
<<弟6回 国民投票運動ができない人 第8回 買収はダメ?>>
第1回  国民投票法案のこれまで (2006/12/15UP)
第2回  憲法審査会とは?(2006/12/26UP)
第3回  発議は分かりやすく(2007/01/10UP)
第4回  有権者に届くパンフレット(2007/01/25UP)
第5回  満18歳で成人? 将来はこんな見直しも(2007/02/10UP)
第6回  国民投票運動ができない人(2007/02/10UP)
第7回  スポットCMの功と罪(2007/03/01UP)
第8回  買収はダメ?(2007/03/01UP)
第9回  過半数の承認と投票用紙への記載方法(2007/03/01UP)
第10回  当日、投票所に行けない人は?(2007/03/01UP)
第11回  憲法改正以外の国民投票(2007/03/15UP)

筆者プロフィール
南部 義典(なんぶ よしのり)
1971年岐阜県生まれ。京都大学文学部卒業。同大学院在学中に、国会議員政策担当秘書資格試験に合格。2005年から、憲法改正国民投票法制の論点整理作業に携わる。自身のブログ「南部義典の国民投票つれづれBlog」(http://blog.livedoor.jp/nambu2116/)を日々更新中。
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