イヤでもわかる!
  国民投票法案
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   更新:2007/03/15
 イヤでもわかる!国民投票法案
南部義典
「そもそも国民投票法案ってどういう内容なの? 何が問題になってるの?」
与党案と民主党案は何が一致し、何が対立しているのでしょう?
これを読めば、あなたも国民投票法案がイヤでも解ってしまいます!
第1回  国民投票法案のこれまで (2006/12/15UP)
第2回  憲法審査会とは?(2006/12/26UP)
第3回  発議は分かりやすく(2007/01/10UP)
第4回  有権者に届くパンフレット(2007/01/25UP)
第5回  満18歳で成人? 将来はこんな見直しも(2007/02/10UP)
第6回  国民投票運動ができない人(2007/02/10UP)
第7回  スポットCMの功と罪(2007/03/01UP)
第8回  買収はダメ?(2007/03/01UP)
第9回  過半数の承認と投票用紙への記載方法(2007/03/01UP)
第10回  当日、投票所に行けない人は?(2007/03/01UP)
第11回  憲法改正以外の国民投票(2007/03/15UP)


第11回 憲法改正以外の国民投票

1.はじめに

 こんにちは。本連載もいよいよ最終回となりました。
 最後に、一般的国民投票の意義と展望についての解説です。
 与党案は憲法改正に国民投票の対象を限定していますが、民主党案は、憲法改正だけでなく「国政における重要な問題に係る案件」も対象とした国民投票法制を志向しています(国政問題国民投票と呼ばれます)。与党案と民主党案の最大の対立論点です。

2.一般的国民投票とは何か

 憲法96条は憲法改正について「必要的」「拘束的」な国民投票を定めています。憲法改正を行う場合には、国民投票が必ず実施されなければならず、かつその結果には拘束力があります。

 これとの対比で、一般的国民投票とは、憲法改正以外の一般的な国政上の重要なテーマ(案件)について、任意的・諮問的に行われる国民投票と定義されます。

 憲法は間接民主制を原則としています(前文、43条)。国家の政治的な意思を統一するのは(全国民の代表者からなる)国会であるというスキームが採用されています。
 間接民主制の下では、公権力を法的に拘束するような国民投票制度は導入できないと理解されています(そのためには憲法改正が必要です)。

 一般的国民投票には、間接民主制を補完する目的があるといわれます。国民投票の結果を立法政策の参考にするのです。
 例えば、皇位の世襲は憲法事項で、これを改正するには国民投票が必要ですが、女性・女系天皇を容認するかどうかという問題は、国会の権能として皇室典範の改正を行うのではなく、国民の意見を十分参考にすべきとの議論があります(これが「国民の総意」につながり、皇室制度がより安定するという趣旨で言われることがあります)。

3.一般的国民投票「案件発議」の要件

 一般的国民投票が間接民主制を補完する役割があるとしても、濫用されれば議会制民主主義の否定(形骸化)を招きかねません。また、プレビシット(時の為政者によって、信任投票として使われるおそれ)の危険もあります。

 それでは、どのようなテーマが一般的国民投票として相応しいのか、要件を定立してみます。

【案件発議の六要件(案)】
  1. 国政問題に係る案件であること
  2. 重要な案件であること
  3. 国民投票を行う現実的必要性があること
  4. 国民に賛否を問うことができる案件であること
  5. 賛否(結果)の予想が困難な案件であること
  6. 国民に明確な設問と適切な選択肢が与えられること

いかがでしょうか。
 国民の過半数の承認を得るための憲法改正国民投票とは異なり、YES-NO Question形式が基本になります。民主党案では、「国政問題に係る案件は、国民が賛成又は反対を表明することができる明確な設問としなければならない」とされています・

 憲法改正国民投票と一般的国民投票はその意義、効果が異なることから、制度運用を柔軟に検討する余地があります。例えば、国民発案(イニシアティヴ)の可能性、発議要件の緩和、投票権者の拡大、周知・広報の柔軟化などです。

4.予備的国民投票

 予備的国民投票とは、憲法改正を要する問題又は憲法改正の対象となる問題についての国民投票と定義されます。一般的国民投票の一類型です。その意義と必要性について、衆参両院の憲法審査会において検討が進められることになります(法案の附則でこのことが確認される見込みです)。
 予備的国民投票は、国民投票の対象を憲法改正以外にも認めるかという与党案と民主党案の対立の中で、合意点として新たに加わった提案です。どのような憲法改正案(項目)が望ましいか等、憲法改正に対する有権的な世論調査を行うことを念頭に、今後検討が進められていきます。

 与党案提出者も予備的国民投票の検討を示唆しているからといって、一般的国民投票の導入まで、現時点で容認しているわけではありません。

 予備的国民投票においては、通常の憲法改正国民投票では対象となりえない、「憲法改正をしない」という項目を付することも検討されるべきです。憲法96条は、具体的な憲法改正案を国会が発議する権能を認めていますが、「憲法改正をしない」という、いわば消極的な意味での発議をすることはできないと考えられているからです。「憲法改正をしない」という国民の消極的意思が過半数を超えるかどうかは、今のところこの予備的国民投票で調査するしかないと思われます。

5.最後に

 全11回にわたる連載にお付き合い頂き、有難うございました。
 まだまだ取り上げたい論点が残っていますが、機会を頂ければ[国民投票/住民投票]情報室のウェブサイト上で改めてコメントさせていただきます。

 まもなく国民投票法が制定され、今秋には衆参両院に憲法審査会が設置される見込みです。
 憲法を改正するべきか、改正するべきでないのか、国民レベルでもさらに深い議論が始まります。読者の皆さんは全員主権者です。堂々と、憲法論議に加わってください。

(−完−)

次回(2007/03/30)から、会員ページにて南部義典さんの新連載「Webコンメンタール 国民投票法」が始まります(全22回予定)。
国民投票法がどのような条文から構成されているのか、体系的、網羅的にわかりやすく解説します。
この連載は会員のみが閲覧できる会員ページに掲載されます。本会の会員でない方はこれを機に本会の会員になって本会を支えていただければ幸いです。>>詳しくはこちら


※私のブログでは「憲法改正手続法案」という略称を用いていますが、本連載ではあえて、通称である「国民投票法案」とさせていただきます。
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筆者プロフィール
南部 義典(なんぶ よしのり)
1971年岐阜県生まれ。京都大学文学部卒業。同大学院在学中に、国会議員政策担当秘書資格試験に合格。2005年から、憲法改正国民投票法制の論点整理作業に携わる。自身のブログ「南部義典の国民投票つれづれBlog」(http://blog.livedoor.jp/nambu2116/)を日々更新中。
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