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   更新:2010/10/17
 【連載】米国の住民投票
今城利之
第1回 米国に「アムステルダム」が誕生する!?

 米国の地方紙をネットで乱読している。今、ホットなテーマはマリファナの合法化。11月2日に、カルフォルニア州全体でその是非を決める州民投票を行う。投票の結果次第では、州民が「葉っぱ」とも、「草」とも呼ぶマリファナを堂々と喫える最初の州になる。西海岸を舞台とするミステリーでは15年も20年も前から、疲れた刑事が押収品の葉っぱをヤル場面もあったが、来るところまできた。

 シリコンバレーと聞くと、インテルなどIT企業、ナパバレーならワインを思い出すのだが、現地ではアムステルダムになる、させてはならじと勢い込んでいる。ここでいうアムステルダムとは、アンネ・フランクではない。コーヒーショップ。正確にはマリファナ・コーヒーショップ。つまりカルフォルニア州内ならどこでも、警官の目を気にせず葉っぱが喫える。

 住民投票の名称は、カルフォルニア・プロポジション19(2010)。略称プロップ19は、投票で過半数の賛成で通過すれば、個人としての使用や栽培などマリファナ関連の行為が合法となる。「マリファナ天国」実現かと早とちりしそうだが、さすがに未成年者への販売禁止や州を越えて国境を越えてのマリファナの移動禁止などは現行法の規定をそのまま引き継いでいる。

自治体は新法によりマリファナ関連事業から手数料や税金を徴収できることになる。税収欲しさの狙いもあるが、非合法なのに最近の葉っぱ、草の一般人への普及や定着も見逃せない。サクラメントのローカル紙であるサクラメント・ビー(電子版)はビジネス面と同じような形で「マリファナ」面を持っている。マリファナが医療目的なら簡単に購入できる「診療所」のマップも掲載している。マリファナ関連のニュースを別面に独立させるほどのウェートなのだ。

 ここまで深く浸透しているから州民投票にまで持ち込まれたともいえよう。そういえば、合成麻薬で死亡した知人女性を必要な救命措置をしたかどうかで刑事裁判で争う押尾学被告も西海岸でドラッグを覚えたとか。もちろん、マリファナとドラッグさらにコカイン・ヘロインなど麻薬常習への拡大などの懸念から合法化に対する反対意見は強い。本家のアムステルダムは、葉っぱの愛好家が国外からも殺到する事態に一定地域へのコーヒーショップの封じ込めや利用者を地元の住民に限るなどを検討、抑制策に転じている。

 カルフォルニアでは現在、マリファナを販売する場所は、診療所とかクラブ、コレクチブの名称を使う。利益を上げるための行為でなく、必要な書類が整っていることなどの条件を前提にあくまで「治療」、「薬品」の一つという位置づけ。だが、この診療所が急増しているのも問題をややこしくしている。すでに、当局は、先制攻撃とも取れる対策をとっている。

 サンノゼの新聞、ザ・マーキュリー・ニューズはサンタクララ市で麻薬取締当局が大手の治療用の葉っぱ診療所を摘発したことを伝えている。3人を逮捕し、100ポンドの葉っぱや2つの冷蔵庫いっぱいのペット用マリファナクッキーやドリンクスを押収した。容疑は、葉っぱの販売で利益を上げたこと。治療が目的ならOKでも、利益を生み出す商売は法律違反というわけ。7万5千ドルの銀行口座も凍結した。

 マリファナ即、麻薬に近い違法な薬物と信じる遅れた保守派である筆者は、まだよく理解できない部分がある。州法と連邦法はどんな関係になるのか。マリファナの個人的な使用や栽培を認める新法の下で公然たるヤクとしての使用に連邦当局はどう反応するか。知事選の候補者は民主党、共和党ともにプロップ19には反対の態度を表明している。ただ、コメントを拒否している点でも同じで、それだけ微妙な問題点となっている。

 連邦政府と州政府の対立では、アリゾナ州の新州法が前例になりそうだ。警官の判断だけで不法移民を拘束できる厳格になった州法に対し、連邦政府は憲法違反として新州法を阻止しようとしている。

 マリファナ関連の受刑者が増加し、刑務所の収容力を超えているという。このため、逮捕しても早め早めに出所させているとか。これにも税金の無駄遣いとの批判がある。マリファナ合法化の背景にはこんな二次、三次の弊害の苦しみがある。

 麻薬は、またメキシコのもう一つの政府、麻薬カルテルの存在を抜きに論じることはできない。マリファナの合法化で、葉っぱの価格が大幅に値下がりするだろう。マリファナの最大の供給源でもあるカルテルには打撃になることは容易に予想できる。家庭菜園でレタスやキャベツと同じように栽培するマリファナが州外に流出するのは合法化すれば時間の問題だろう。マリファナ問題を州外に拡大する結果が見えるようだ。マリファナをコカインなどの薬物中毒の入門編と位置づけする人もいる。

 カルフォルニア州民は、プロップ19で地域の問題に自分たちの結論を出す。と同時に、国際的な一大産業になってしまったマリファナの是非についても判断を下す。なお、メキシコでは政府とカルテルとの麻薬戦争での死者は6500人に達している。


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筆者プロフィール
今城利之
日本経済新聞社の編集局流通経済部記者、データバンク局次長などを歴任した国際派。当会会員。
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